RAYと大学生との対話(後編その1)

RAYとゼミ生との対話(中編の続きです)

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【身体が勝手に動くこと】

RAY)それから僕たちの行動は勝手に手が動くということも多分先生から聞いていると思うんですけど、これもなかなか厄介で僕は比較的少ないので良い方なのですが、この辺が結構ややこしいところで、僕自身、今は無いのですが、以前、服を破る行動をしていて、先生のところにもずたずたに敗れた服できたことがありました。そう言う行動はやりたくてやっているわけではなくて、気がついたら手が服にいっていて、止めれなくもないのですが、止めるともっともっとパニックになっていくので、これはここで止めておくしかないというか、服をちぎり続けておくしかないという感じになって、実は止めないでではなく、止めると何が起こるかですが、大体人に向かいたくなるので、やっぱり止めてはいけないなあと思っています。

 

手を止めなければなんとか人に向かわないので、僕は自傷だけをする人間ということになっていますが、自傷を止めると人に向かうらしいということはなんとなくわかっているので、僕自身も一旦自傷がはじまると、自分の服を破る行動が始まったらそれは止めずにいることにしていたので、お母さんは大変でした。せっかく買ってくれた服がすぐにボロボロになるので、なかなか大変でしたが、それでもそれを認めてくれたので、人に向かって手を出すことはせずにすんだんだと思っています。だから本当に色々苦労があって、みんながそのような中で混乱に陥っていくのは何度も見たので、僕はなんとか乗り越えられて良かったなあと思っています。先生にあったころは、まだ混乱の最中にいたので(12歳のころ)、色々大変でしたが、最近は落ち着いてきたので、そういうことも昔の出来事みたいに話せるようになりました。やはり混乱は大きかったなあと思っています。

 

【物の見方】

RAY)それから先生は、僕たちは逆に物がよく見えているということがあって、先生から言われて、そんなことがあるのかと思って、みんなとの違いに気をつけてみたら、僕たちはいっぺんに物が見えているらしいということがわかってきました。

 

先生がよく引き合いに出すのはiPadのことなのですが、僕たちの仲間はiPadが大好きな仲間が多くて(僕はあまりやってないですが)iPadの好きな仲間が何にびっくりされるかというとあんなにたくさん並んでいるアイコンの中から好きなものをすぐ見つけ、そのあとどんどんのその先に進んでいくことがとても早いらしくて、しかもスクロールというのをするときに他の人には見えないくらいのスピードでやっても見えているということを友達がやって驚かれるというシーンをよくやってみてきました。確かに僕も見えるし、僕もそのくらいのスピードで見つけられるので、先生から言われたことをあらためてふりかえってみたら、どうやらアイコンを見つけるときにまるで一筆書きをするように見つけるのに対して、僕たちは同時にいっぺんに見ているので好きなものがどこにあるか一発でわかるので、気がついたらすぐそこに手がいきますから、すごいスピードでできるのは当たり前なのです。それとスクロールの速さとの関係はわかりませんが、みんなが見えないというやつはみんな見えているので、みんなの目はどういうふうになっているんだろうと思います。

先生) みんな流れちゃうんだよね。

 

RAY)その辺が僕も不思議なところですが、野球の選手が動体視力が良いと言いませんでしたっけ?

 

先生)急行電車に乗っていて駅の看板が流れていくのを見ることができるという。陸上選手は関係ないかな。

 

RAY)僕には見えているので、電車に乗っているときの文字で僕には見えている文字が母さんには見えていないそうなので、今度ためしてみたいので、見えたか見えないかを言ってくれれば僕が後から先生に言うので。見えない時はこれは見えないと言っておいてくれればこれはお母さんには見えないのかと思うし、お母さんが見えないときがあったらそれをしっかり観察しておきたいのですが、そういう見え方の違いがあるというのを先生はなにか一生懸命考えて、人の目を見る人たちは、一筆書きのようなものを発達させて、人の目を見ない人たちは同時に物を見る見方を発達させると思いついたそうで、そのことが正しいかどうか先生に報告しなければと思っているので、色々その見方について観察をすることがあります。

 

とにかく、僕たちには当たり前に早く見つかるものが、みんなにはみつからないということがしょっちゅうする経験で、お母さんが物を探しているときに、僕にはずっと前から見えていることがよくあって、いったいどうしてあそこにあるのが見えていないんだろうと思うのですが。確かに先生に説明をもらって以来、僕はじっとしていて見えているのに、母は一緒懸命探しているのにたどりつくので、僕ならじっと見続けて探すだろうに、お母さんはじっとしてなくて探すのというのが違うということがわかりました。色々見え方の違いがあるというのがあるというのがわかったのが面白かったし、そのことと絵には関係があるのだろうと思っています。

 

【絵と見え方との関係】

RAY)どういうことかというと、僕たちはいっぺんに物を見ることができるので、絵の隙間のような情報が圧倒的に見えているので、先生が全体のバランスが良いということをしきりに言うけど、僕は全体がいっぺんに見えている気がするので、全体が一気に見えないと、部分部分に下書きをしないといけないんだろうと思うので、僕は下書きをしなくても全体がぱっと見えているので、その全体を見ながら部分にかかっていくときに、全体の情報が消えないので、別に下書きをする必要を感じないのです。その辺は見え方の違いが僕に下書きを必要としないのかなと思う時がないわけではないですが、その辺はよくわからないけれど、僕独特の見え方が絵には関係していると思います。

 

ただし絵のスタイルはそこからきたのか全然わからなくて特にみんながふしぎがるのは自画像のやつで、頭が2つに割れているように見えるやつです。皆さんには割れてみえるのですか?それが僕には普通の頭に見えるので。だって頭の真ん中に窪みがあるじゃないですか。それをしっかり表現しようと思うと、ああいう絵になるのは、僕は当たり前だと思っていて、そのことをどうしてそうなるのかをわからないでいます。僕にとっては当たり前のことがみんなにはとても不思議に見えることが時々あるのですが、その僕にとっての当たり前のことがみんなが不思議に見えるのでそれにみんなが驚きながら感動してくれるので、良いことなのか悪いことなのがわからない。

 

みんなと同じ見え方に近くて感動してくれるものの典型が犬の絵で(これは自分たちのと似てて)。顔の絵は特に辺だと言われるのですが、その変なのが良いと言われて、良いと言われているのが、悪いと言われているのかよくわからなくなる。犬などの褒められ方は、ああ同じなんだと思うけれど、人の絵になるとみんなが不思議がってそれでも褒めてくれるので不思議になりますが、なぜ僕だけそういうふうに表現したくなるのかちょっとわからないところがあるのですが、色々先生に聞かれたりするので、僕自身の絵のことは振り返る機会があるので色々発見があって良いなと思っています。

 

どんな感想を持ったか教えてもらっても良いですか?

 

女性)

私は、絵はポップに見えて可愛い。介助員で、自閉症っぽいお子さんと関わるときに、視線が合わないということはあって、でも聞いているというのはその子の行動からわかるので、こっちも頑張って振り向かせることはしないで。学校でよく人の話を聞く時は目を見なさいというから、みんな多分目を見るのかなと思うけど、急にずっと見られると、自分が何か悪いことをしちゃったのかなと、なんか変なことあったかなと心配になることがあるんですけど。瞳に写っている風景のことを聞いたときはびっくりしました。

 

先生)Aさん、(子供が)振り向いていないのに話すの?と言われたことはある?

 

女性)特別支援学級にいるお子さんに関わるときには言われたことはないですけど。通常級にいる自閉症っぽいお子さんに関わる時は、先生はどうしても自分の方を向かせたがるので、本当に話を聞いているかわからないよね、という話をされたことがあります。聞いていると思いますよ、とは言うんですが。

 

先生)お母さんは目を合わせてないことについてはどうでしたか?

 

母)2−3歳の頃、目を合わせないことで、耳が聞こえてないんじゃないですか?と言われたりしました。巡回の保健師さんからも、目を合わせないので、一度、保健所に相談に行ったらどうですか?とも言われました。

 

先生)じゃ物心ついたときにはお母さんは当たり前に見てくれたよね。

 

RAY)そうです。だから家族は最初から当たり前に見てくれていましたが、やっぱり不思議だったのですね。先生は見る方ですか?

 

先生)僕はちょっと過敏な方なのね。人が今何を考えているかということに若干敏感すぎるので、余計なことを考えていることの方が多いかな。ちょっとずれるけど、自意識過剰だね。

 

RAY)それはどういう感じですか?

 

先生)マイペースではいられない。絶えずみんなの目線に対して行動することが多い方の人間なんだね。多分。

 

RAY)なるほど。色々あるんですね。

 

男性1)普通の人は見えてないようなものも見えてると言っていたと思うんですけど、家庭教師の子もパソコンの操作がなにやってるかわからないくらいの速さで操作しているので、自閉症の人は見え方が違うんだなと。

 

母)RAYと同級生の女の子もすごく早いよね。

 

先生)他になにかないですか?

 

男性1)趣味とか。

 

RAY)趣味は絵です。音楽は聞くのが好きですが、自分から選ぶのはめんどくさいので誰かがかけているのを聞くのが好きです。みんなが聞くのを一緒に聞くのが大好きですが、自分から選ぼうという気持ちが湧いてこないので、そこがみんなとちょっと違うなと思っていますが、みんなが良いというのは大抵いいですが、時々合わない音楽もあります。激しい音楽です。激しいのは僕の耳に限界のところがあって、これ以上うるさいとたまらなくなる境目があるのですが、境目が人よりは低いところにあるので、周りの人が平気でも僕にはもううるさくなることが多いけど。

 

男性1)小さいときに好きだったことが大人になっても好きだったこととか。

 

RAY)それは僕たちが童謡が大好きなのは他の人よりも長く続いているように見えますが、多くの仲間が大人になっても童謡を聞いているといってちょっとからかわれることがあるのですが、童謡は大好きです。それは本当はみんなは違うのか、みんなは照れくさいのか知りたと思っているのですが、とにかく僕たちは小さいときに好きだったものは今でもずっと大事にしているので、小さいときに好きだったアニメの顔など大好きだし、もうそういうのはなくなったけど、一旦好きになったものは、ずっと手元に置いておきたくて、それをこだわりと言われて困ることがありました。今はそういうものはないので良いですが、昔はいろんなものをなかなか捨てられないのが困っていたことがあったので、趣味は変わらないのかなと思っています。

 

先生)他の人は恥ずかしいからやめるのか純粋にはわからないところがあるね。彼はそうなの?

 

男性1)そうですね。あんぱんまんとか好きで。お母さんが大人になっても好きなのかきにしてたので。

 

先生)ぼくらも本当はそうかもしれないんだけどそれはわからないんですね。恥ずかしがってやめちゃうから。でもみんなの方は純粋に大事にし続けていることは変わらないね。子供っぽいと勘違いして言ってしまうことはあるんだろう。・B君はどう?

 

男性2)僕は人の絵の話が印象的で。人の頭が2つにわかれているというのは確かに言われてみれば確かにそうだなと。あと、隙間の部分が見えるから下書きがいらないという話は、どういう感覚かもっと聞きたいなと。僕は絵が苦手なので。頭でっかちになったり体が小さくなってしまったりするので。だから空白をみたときにこういうふうに描けるなということですかね?

 

RAY)僕は皆さんがどう見えているかわかってないので説明が難しいのですが、想像するに、僕はみんなのように中心に視点を持っていかないのではないかと思います。皆さんは描くときに部分だけ拡大しているのですか?

 

先生)拡大はしてないけど、部分に集中して周りが見えてない見方はしている。

 

RAY)はい、そういうのがわからなくて。僕は常に全体が意識されていますが、顔を近づけるので確かにそのときはそこしか見えていないのですが、いつもイメージが全体があるし、顔を離した瞬間また全体が見えるので、僕は全体から部分を切り出す感覚がよくわからない。いつも全体がセットで見えているというふうにいえば説明になるのだろうけど、その辺がなかなか説明が難しいところですが、その比較がどうやったらできるのか、先生と相談してみたいです。

 

それがもしかしたら遠近法と関係するのかもしれない。僕は遠近法が大嫌いで僕の絵には遠近法がないので批判する人がいるのですが、遠近法の方が絶対におかしい。先生確かこれ関係あるんですよね?

 

先生)遠近法って一箇所から見たことにするから、玲さんは一点からじゃなくて全体から見ているので遠近法じゃないんだよね。遠近法じゃないのはエジプトの絵とか色々あるよね。

 

RAY)その話は、先生から聞いたのですが、遠近法じゃない絵画もいっぱいあると聞いて、なんだそうなのかと思いましたが、小学校時代は遠近法で描かないともう幼児画だと切り捨てられていたので、本当に悲しかったけど、最近の僕の絵はそのことで問題を指摘されることは全くなくなったので良いのですが、遠近法じゃなくても良いと先生から言われたときに、なんだみんなそんなことを気にしていたんだということがわかって、不思議でしたが、今でも遠近法の絵を見ると、僕にはその絵が絶対に良いとは思えないと思っていまいます。

 

先生)こんど実習はどこに行くの?

 

男性2)はい、Mの教育実習に。

 

男性3)その着ているトレーナーも描いたんですか?

 

母)はい。やもりのデザインです。

 

【視線について】

男性3)欲しいなと。自分のことになってしまうんですが、マルチタスクっていうか、何個かやるのがめちゃくちゃ苦手で、全体が見えているというのが、違いを感じたというか。面白いなと。またさっきの話に戻ると、僕ずっと話をしているときに、ずっと人の目を見ちゃうタイプで、相手がずっと目をそらすのを待っているということが多くて、無意識なんですけど。聞いてるよっていう意識でずっと目を見っぱなしになって。向こうが目を逸らすというか。目を見ているというのは聞いているという意思表示なのかなというのがあって、見てなくても聞いているよというのが自閉症の子とは違うのかなと。

 

母)目力強いですよね。目力って意志力にも関係するので。

 

男性3)走っているときってそれこそ全体を見ているんですよ。例えば、レースだったらまわりで展開が変わってくるじゃないですか。練習とかでも前走っている人の距離感を見ていないといけないしとか、足元がぬかるんでたらそれ避けなければいけないとか、前に人走ってたら避けなきゃいけないとか色々考えたりとか、あとそれとは別に自分のペースがどれくらいで走っているとか自分の動きがどうなっているとか、今、お尻の筋肉使えてないとか色々考えるので。

 

先生)暇に走っているわけじゃないんだね 笑

 

男性3)僕は色々と考えているので。本当に走ることに集中して走っている。

 

先生)考えてみたらものすごいスピードで走っていりうのでぼーっと走っていたら危ないよね。

 

男性3)追い込むとき以外の練習、それこそゾーンに入るというか、本当に集中してやっているので、そこに似ているのかなと。だからメリハリがあって。練習が終わったあとすごく疲れますね。体の疲労じゃなくて心とか頭の疲労とかすごく感じますね。

 

先生)スポートしている人たちは種目によってなんかはしているよね。多分卓球している人たちは羨ましいほど全体を見たがっているよね。

 

RAY)ぼくは20キロとか30キロとか走る人が信じられない。僕はマラソン的なものは全然ダメなので。それができる感覚がよくわからなくて。でも駅伝は好きで見ると嬉しくなるのは、僕たちはサッカーのような番組は何をやっているのか全然わからなくて、全体が見ているのだからわかると思うのですが、全体だけみているとわけがわからなくてどうやらみんなはあの広い中から一人を見つけて、その一人を一生懸命追いかけているのでしょうが、僕はずっと全体が見えている感じなので、サッカーの中継は何にもわからない感じです。駅伝の中継はアップが多いので本当に良く見えるので、普段なかなか興奮しているのについていけないのに、駅伝はついていけるので、アナウンサーの説明についていけるのは、駅伝と相撲だけです。

 

男性3)サッカーって、シュートした人が偉いのかパスした人がえらいのかわからないってそういうことなのかも。

 

RAY)その辺には全く話がついていけないので。僕は気がついたらもうゴールが決まっているのでなんだかアナウンサーが言っている声と見ているものとが全然一致しないけど、駅伝や相撲はアナウンサーの声と画面とがぴったりくるので見ていて気持ちがいいくらいです。

 

先生)C君、箱根の山を登るところ見たよ。

 

母)それはすごいですね。

 

RAY)そこ僕は今年見た気がするけど、一人をしっかり写してくれるのは嬉しくてしかたないので、むしろ駅伝は見たくなるし、相撲もわかりやすいので見たいのですが。野球も案外難しくて、せっかく見ていたのにカメラがすぐ違う方向にいくので何がなんだかわからなくなるから僕は苦手です。それに駅伝と相撲はわかりやすいので大好きです。刻一刻にその人のドラマが伝わってきて、人が感動する姿が伝わってくるからです。

先生)そこは強調したいよね。自閉症の人はそういうことがわからないと人は平気で言うからね。たまたま感動が伝わってくるのが駅伝や相撲だということだね。しっかり大写ししているからね。

聞いてみたいことはありますか?

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