柴田先生からのフォトブックの紹介文より

RAYのフォトブックを自費出版出来たらということで、まず、今月1か月期間限定で、渋谷の天狼院書店でフォトブックを販売させていただいています。

柴田先生に、自費出版できたらと言うことで、紹介文を書いていただくことができました。

最初の部分だけですが、紹介させていただきます。

柴田先生の障がいのある人から学ぼうとする姿勢と優しさを感じ、思わずグッときてしまいました。このような大きな愛のある先生に出会えたことに心から感謝です。

以下、柴田先生からの紹介文です。

 

RAYさんの絵に学ぶこと

國學院大學人間開発学部  柴田 保之

RAYさんは、その内面に豊かな言葉の世界が存在しているのに、それを表現することにたいへんな困難を感じています。私は、筆談という方法で、そのRAYさんの内面の言葉が外の世界に表現されることのお手伝いをしてきましたが、それは、RAYさんからたくさんのことを学ぶ貴重な時間でもありました。

一方、RAYさんは、絵画という表現手段を幼少期から磨いてきました。そして、その作品は、見る者の心に直接迫って、強い感動を呼び起こさずにはいられないすばらしい表現です。

 

障害のある人々の絵画については近年幅広く取り上げられるようになってきたことはたいへんすばらしいことですが、私には、そうした表現が生まれてくる秘密については、なかなか見当がつかずにいました。研ぎ澄まされた感性や技の存在があることはわかるのですが、それがどのようにして生まれてきたのかということの手がかりが見つからなかったからです。

私は、障害児教育を、教育心理学の分野で勉強してきましたから、絵画の発達などについてもいろいろと調べてきました。そして、文化を越えて存在する幼児期の絵画の発達段階の存在など、たいへん興味をそそられるものではありました。しかし、その議論には大きな落とし穴があります。それは、障害があるとされる人々の絵もまたその発達段階の視点から見ようとしてしまうことです。

 

私がその落とし穴を実感したのは、20代の半ば、ある幼児教育の講義で絵画の発達を論じた時のことです。障がい者青年学級で出会っていた男性が、いわゆる頭足人と呼ばれるスタイルの絵を、ほのぼのとした温かいタッチで描いていらっしゃったので、それを紹介しようと考えたのですが、絵を持っていくのを忘れてしまい、黒板にチョークで描いて紹介しようとしたのです。しかし、確かにそのスタイルは何とか伝えられますが、その方の絵が持つなんとも言えないすばらしさは、まったく表現することができなかったのです。結果的に私が学生に伝えてしまったメッセージは、「知的障害のある方は、幼児の発達段階の絵を描く」というたいへん失礼なものになってしまったのです。それ以来、私にとっては、そういう絵画をどのように理解することが正しいのかということが大きな課題となって残りました。

 

それから、長い時間が流れましたが、今、RAYさんは、その素敵な絵の秘密を言葉で私たちに明かしてくれようとしています。…」

やもり 2021/6/20 RAY

 

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